英雄は一人でいいー「英雄《しゅやく》になれない槍使い」を読んで、評価・感想
ー「あの極上メロン畑に比べたら、うちの女子なんて潰れたジャガイモやんかっ!」
Web小説ランキングのアクセス数がすごいことになっていて、びっくりです。
それだけWeb小説が人気になっているということでしょう。
Web小説の人気が、そろそろラノベよりも人気になりつつあると個人的には思っています。
さて、本日も新しいおすすめWeb小説を紹介しましょう。
英雄というものを、変わった視点から切り込んだ斬新な作品です。
この作品を読めば、英雄に対してポジティブなイメージを持てなくなってしまうほどのインパクトがある作品・・・。
タイトルは、「英雄《しゅやく》になれない槍使い」。
あらすじ、簡単な紹介
西暦二〇三一年、謎の結晶体「CE」の襲撃により、人類は緩やかに滅亡への坂を転がり落ちていた。
これは、聖剣の輝きによって地球を救った、偉大な英雄の物語――ではない。
英雄の陰に埋もれ、歴史の闇を駆け抜けた、一人の槍使いの物語。よくあるチートハーレム系主人公の物語が、本当は陰謀にまみれていた事を、脇役の視点から真相に迫るようなお話です。
基本的には学園バトル物のノリとなっています。
異世界転移モノが多くを占める中、本作品は転移でも転生でもなく、異世界の少年が主人公となっています。
そして特筆すべきなのは、その少年が主役ではないという点。
主人公なのに主役ではないという、思わずどういうこと?と頭に疑問符を並べてしまうはず。
なろうによくあるような、「勇者のおまけで召喚される作品」と構成は似ていますが、この作品の切口はそれよりももっと深い。
英雄は単なる英雄ではない。英雄には英雄たるわけがあり、英雄たるための事情がある。
物語が進むにつれて判明して行く事柄がどれも強烈で、思わず「なん・・だと・・!?」と某有名なセリフを呟いてしまうほど。
この作品を読み終わった今、今まで英雄に抱いてイメージを大きく変えられました。
もう、英雄が主役の作品を純粋に楽しむことができなくなってしまうほど。
メッセージ性を持った奥深い作品であり、非常に読み応えがあります。
作品の特徴、魅力
英雄といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?
チートのような能力を持っており、たくさんのかわいらしい女の子に好かれており、正義心にあふれている。
そういった、英雄像を抱いている人は多いと思います。
実際、Web小説に登場するような英雄は必ずといっていいほど上の3つを備えています。
まさに誰もがうらやむような状況。だからこそ英雄が主人公の作品は人気がありますし、王道であろうとも色あせない。
しかし、英雄とはほんとにそれほどいいものなのだろうか?
努力もせず偶然手に入れた力で、自身が思う正義を振りかざす、聞き分けのない子供。
見方によっては上のようにもとらえれるのではないでしょうか。
つまり、何が言いたかったかといいますと、英雄には二面性があり、
この作品は、あえて英雄ではない少年を主人公とすることで、彼の目から見た英雄の二面性に着目しているわけです。
特に素晴らしいのは二面性に関する描写であり、見方を変えればここまで大きく違うものなのかと思わず身震いしてしまうほどのギャップ。
その落差を巧みな構成力によって見事に表現した作者の力量は逸品もの。
始終、英雄のギャップに悶々としながら、読み進めることとなるでしょう。
もう一つ本作を面白くさせているものに主人公の特異性があります。
英雄ではない少年が主人公ではありますが、主人公も平凡な主人公というわけではありません。
むしろ、幼少の頃からの鍛錬によって、誰よりも強く気高い。その強さは英雄を凌駕してしまうほど。
普通に考えるならば、より強いものが英雄としてふさわしく、主人公の少年が英雄になるべきでしょう。
しかし、主人公がいくら活躍しようとも彼が英雄になることはあり得ません。英雄が英雄であるためにー
その主人公の強さと、英雄の対比が上手い具合に描写されており、続きが気になってしまう。
すごくもったいぶった言い方となってしまいましたが、気になる方は是非読んでみてください。
読み進めるにつれて明かされていく真実が鮮烈で、英雄とは一体何なのかーそれを改めて考えさせられます。
「英雄やない……」
そんな当たり前の単語が、一年生達の胸には深く突き刺さった。
自分は英雄ではない、特別ではない、いくらでも替えの効く、その他大勢でしかない。
子供のような幼い全能感に浸ってはいないが、大人ほど自尊心が擦り切れてもいない、高校生という狭間にいる彼らには、当たり前の現実だからこそ受け入れ難かった。
言葉を無くす下級生達に、麗華は同情するように優しく告げる。「そう、ボク達は英雄に成れない。だって、英雄は一人だけだからね」
さて、なんだかシリアス風味な紹介をしましたが、実は本作にはコメディ要素もあります。
魅力的なキャラクター達によるギャグ満載のやり取りなどによって、思わずクスッと笑ってしまう場面が多々あります。
シリアスな場面も読み進めるのがつらいほど重くなることもなく、全体的に読みやすい作品なのも個人的にはポイントが高いですね。
まとめ
最近のなろうは、カクヨムのほうからたくさんの小説が移ってきているためか、今まであまり見かけることのなかった小説を多く見かけます。
その中に、ワクワクするような話があるかもしれないかと思うと、楽しみでなりません。
いまだかつて体験したことのないような高揚を与えてくれる作品、それを求めて読み漁る日々です。

XZ

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