二人の想い~「Vermillion;朱き強弓のエトランジェ」を読んで、評価・感想
ー「狂おしいほどに愛らしい、ひとりの少女の姿に思いを馳せて」
皆さんWeb小説読んでいますか?
今日紹介するWeb小説は、「Web小説長編ランキング」記事のコメントで紹介してもらった小説です。
たくさんのコメント、本当にありがとうございます。
今日紹介する小説である「Vermillion;朱き強弓のエトランジェ」は2度読んだことがあります。
1度目はあまり面白いと思っていなかったのですが、2度目でじっくり読んでみるとあらびっくり。
のめり込むように読んでしまうほど引き込まれてしまったのです。
この記事ではその作品の魅力をたっぷりと伝えていければと思います。
作品紹介
洋ゲーVRMMO【DEMONDAL】は、非常に硬派なゲームシステムで知られている。まずレベルがない。スキルもない。ギルドもない。インベントリもない。簡易メッセージやマップの類もない。その無駄なリアリティ、最早VR生活シミュレータ。ゲームらしい要素として、武器を振るえばマスタリーと呼ばれる習熟度が上がっていき、それに伴って身体能力も強化されるが、それだけだ。ファンタジーゲームなので魔術は存在するものの、精霊と契約するのが難しすぎて、プレイヤー人口の1%しか魔術師は存在しない。そんな限りなく中世に近い仮想世界【DEMONDAL】で、騎射の達人として知られる主人公・ケイは、ある日フレンドのロシア人と共に異世界へ転移する。元々シビアだったゲームが現実化したことで、世界はさらに苛酷さを増していた――。
ゲームの世界へとトリップしてしまうという、よくあるような設定です。
しかし、そのゲームというのがゲームらしくないほどリアルという点で珍しい小説。
スキルもなく、レベルもなく、頼りになるのは自分の実力のみ。
だからこそ理不尽なチートも存在せず、いくら強くても流れ矢であっけなく死んでしまう。
「敵がいるならチートを使って無双だ!」のように単純には行かず、リスクを考え適切に行動しなければなりません。
そういう点で、単に主人公最強で力を振りかざすだけの小説とは異なります。
また、主人公は一人ではなく、相棒と呼べる人とともにゲームの世界へとトリップします。
いろいろないざこざに巻き込まれながらも、相棒との仲を深めていきます。
その相棒が本当に可愛らしく、それを見るためだけにもこの小説を読む価値はあるでしょう。
作品の魅力、特徴
この小説を一言で表すのならば、「丁寧」です。
物語の設定も然り、情景描写や感情描写も然り、説明文もしかり。
小説として、読みやすい工夫が最大限に配慮されています。
Web小説にありがちな、「一体どういう状況か頭の中で想像できない」なんてことは全くありません。
読んだ文章が、そのままスラスラと鮮明な映像として頭のなかで再生されます。
単純に説明文を並べているだけではこうも簡単に読みやすくはありません。
そこには文章の工夫がいろいろと込められています。
たとえば情景描写が行われるとき、必ず全体像の説明から始まり、次にその中の個別に着目して説明がおこなれています。
まるで、俯瞰図からその中の1点にズームアップしていくかのようで、文章がスーッと頭のなかに入っていきます。
そういった丁寧な描写があるおかげで、設定や文章に違和感や矛盾を抱かず、スラスラと読みやすい。
Web小説でこれほど読みやすい小説はなかなかありません。その読みやすさがこの小説のお面白さを最大限に引き立てているのです。
次に、この小説の面白さがどこにあるのかを紹介しましょう。
まず一つ目は、主人公の強さが絶妙な点でしょう。
確かにかなり強いのだけれども、それでも死なないことはない。
一つのミスが死につながるという緊張感が、困難を困難たらしめている。
主人公最強モノにありがちなのは、主人公が強すぎて困難が全くの困難となっていないことです。つまり、全くの逆境がありません。
そのせいで緊張感のない物語となってしまい、読み応えもありません。
しかし、この小説の主人公は常に死と隣合わせなので、主人公に困難が訪れると読者である私達もハラハラドキドキとなってしまう。
この先どうなるんだろうと気になってしまう、そう思わせてくれる。
この恋い焦がれるような気持がこの小説を面白くしているのです。
最後に、主人公とヒロインの魅力についても言及しておく必要があるでしょう。
「ヒロインが、かわいい」
要約するとこれにつきます。
ヒロインが可愛くない小説なんてありませんが、その可愛さを文章で読者にも共感させる小説は少ない。
いかにその可愛らしさを読者に届けるか、それができるかどうかが作者の文章力の見せ所。
単に容姿を説明しただけでは読者に届かない、セリフに特徴を加えても届かない。
ヒロインの動作、思考、感情、それら全てを文章で表し、さながら実際に存在しているかのように魅せてはじめて、読者はヒロインを可愛いと思える。
それだけ難しいことなのですが、この小説はそれを見事に成し遂げています。
人物描写、感情描写も「丁寧」に描いているこの小説だからこそ、ヒロインがこれほどまでに可愛く感じるのです。
まとめ
この小説は燃えるような熱い展開はありません。
しかし、じわじわと胸をくすぶるような面白さがずっと与えてくれます。
1回目読んだ時にこの面白さに気付かなかった当時の僕を殴ってやりたいぐらいですね。
改めて、この小説をコメントにて紹介してくださったねむさん、ありがとうございます。
「Vermillion;朱き強弓のエトランジェ」 小説を読もう

XZ

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