ぼくのあしあと

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法律の解釈は誰でもできる?!-法令解釈の作法【導入編】

      2016/01/26

手錠

唐突ではありますが、長谷川豊(元フジテレビアナウンサー)のBLOG記事を以下に引用してみましょう。流し読みで構いません。この長谷川豊の主張に、あなたは共感しますか、それとも、嫌悪感を抱きますか。どうやら、長谷川豊は法令解釈だとか最高裁などというものに強い反発感を抱いており、それを国民感情に反するものとして痛烈に批判(いちゃもんづけ?)しているようです。そして、あなたも、(ここまで極端ではないにしても)少なからず法令解釈や最高裁というものに対して一種の不信感・猜疑心を感じていることでしょう。本稿では、法令解釈とは何かを懇切丁寧に説明していきたいと思います。本稿を読んでいただくことで、あなたの法令解釈に対するイメージが少しでも変わって、法令というものに親近感を抱いていただけるのだとすれば、筆者としても嬉しい限りです。

「心の底から叫びたい。最高裁のバカ裁判官ども、全員、辞めろ!すぐに辞めてしまえ!断言するが、お前たちなどに、人を裁く能力は皆無だ。能力の無いバカは辞めろ。それが日本のためである。」

「日本の『裁判員裁判』は1審でどんな判断をしたところで、2審や最高裁でいくらでもひっくりかえせるという。冗談じゃない。何のための裁判員制度だ?詰め寄る筆者たちマスコミに、専門家たちは『いえいえ、ないがしろになんてしませんよ。当然、裁判員たちの判断は最大限に参考意見として考慮されることでしょう』と口をそろえていた。2009年までは、だ。みんなもテレビで見たことがあるはずだ。 今回、死刑が『先例に習って』取り消されたうちの千葉のケースであるが、裁判員たちが死刑判決を下したのが竪山辰美被告という53歳のムナクソも悪くなる最低の人間である。 」

「この竪山という男は、何の罪もなく、前日まで、いつも通りの楽しい日常を送っていた荻野さんを…殺害し、裸にし、火をつけて燃やしたのだ。荻野さんの未来は何だったのだろうか?荻野さんのお父様お母様はどのような気持ちになっているか理解できないのだろうか?最高裁の、法律を暗記する以外何の能力もない最高裁の裁判官たちはこの絶対に許してはいけない男を、殺したのが一人だし~殺したのが一人だけなら今では死刑じゃないし~という理由で、あっさりと死刑判決を覆えしたのだ。 最高裁でふんぞり返ってる、今回の低能裁判官は全員、即日辞めろ。国民の税金をお前らに払うのは断固反対する。理由はいたってシンプルだ。先例をなぞるのであれば、お前らなんぞ、必要ないからだ。」

 

はじめに

法律を学んだことのない人は、法令の解釈というものを、「どうとでもなるもの」「個人の主観に過ぎないもの」「素人だましのいい加減なもの」と感じているかもしれません。法令には条文があり、それを粛々と事案に適用していけばいいはずなのに、「この条文はこう読むべきだ」「この条文は立法論上おかしい」などと学者や最高裁が言い出す、しかもそのようなことが頻繁に生じる、あなたには訳が分からないことでしょう。法令にきちんと事細かに記せば、解釈うんぬんで子供だましみたいなことをしないでいいし、法律家なんて必要なくなるはずだ、とも思うことでしょう。エセ科学者やエセコメンテーターがTVに出てきて、「法律家は将来人工知能に代替される」だとか「法令はすべてプログラミング化できる」などとのたまうし、法律家に対する不信感は降り積もる一方ですよね。

しかし、です。出来ることならそうしたいですが、出来ないから法律家が存在するわけです。そして、これからも法律家が消滅することはありえません。可能性があるとすれば、地球が地球外生命体に支配されるか、人間の創造した人工知能に人間が乗っ取られるか、地球が滅亡するか、それぐらいしかありません。そこでいわんとしていることは何か、以下の記述を見ていけばおのずと明らかになります。

法令解釈とは何か

職務質問

法令解釈とは、法令を、具体的事案にあてはまるのどうか、正しく解釈することです。成文法主義を採用する日本において、法令の解釈といえば、(原則として)成文法令の解釈です。

では、早速例題を見てみましょう。

【参考条文】刑法第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以上の懲役または五十万円以下の罰金に処する。

【例題】Xは、Aが所有する土地においてAの承諾なしに桑樹を耕作し、発芽した桑葉を収穫した(桑葉の所有権はAにあると仮定する)。Xは、桑葉を人目を忍んで密かに盗取したものではなかった。⇒刑法235条にあてはまるか?

窃盗罪という犯罪は、一度は耳にしたことがあるでしょうし、「他人の物を盗ったら犯罪なんだな」と理解していることでしょう。窃盗罪、なーんだ簡単じゃないか、小学生でも分かるぞ、と。では、この例題にあなたはどう解答しますか?「Xは他人Aの桑葉をAの承諾なしに盗ってきたのだから、窃盗罪になるに決まってる」と思ったでしょうか。しかし、例題をよく見てもらうと、「人目を忍んで密かに盗取したものではなかった」と書いてありますよ。刑法235条は「窃取した者」と規定していますから(「窃」は「窃かに(ひそかに)」と読めますよね)、Xは桑葉を堂々と盗ってきた以上、窃盗罪にあたらないといえるかもしれません。このように、とっても簡単そうな法令でも、解釈はなかなか一筋縄ではいきません。いざ具体的事案を掲示されたときに、たくさん疑問点が浮かび上がってくるのです

法令解釈の方法

法令解釈の方法には、文理解釈(規定の文言を国語的・論理的に解釈すること)と目的論的解釈(既定の文言を一定の目的を達成するための手段として解釈すること)があります。たとえば、「リア充」を解釈してみましょう。「リア充」の文理解釈は、「(リアル充実=)実生活において充実している者」でしょう。そして、「リア充」の文理解釈は、(原則として)一つしかありえません。一方で、「リア充」の目的論的解釈はいろいろ考えられます。恋人を持つ者が恋人を持たない者をディスりたいという「目的」を達成するためには、「リア充」を「恋人を持つ者」と解釈するでしょう。ニートが働く者をディスりたいという「目的」を達成するためには、「リア充」を「働かずして好きなことを出来る者」と解釈するでしょう。

両方法は相互排他的ではなく、同じ条文であっても臨機応変に組み合わせて利用されます。法令解釈における考慮事項は多岐にわたり、一般論を提示することは大変はばかられるのですが、①文字や文章の国語的意味、②条文全体または法令全体の趣旨、③社会的・政治的・経済的諸条件、④結論の妥当性、⑤正義・公平・公共の福祉、などが考慮事項として挙げられるでしょう。

法令の解釈はそもそも必要なのか

悩む

法令の解釈がこんなに難しいことならば、もっとわかりやすい法令を作るようにすればいいではないかと思われるかも知れません。確かに、法令解釈の負担は、立法技術で一定程度緩和されますし、今後もその努力は積み重ねられていくべきです。しかし、法令というものは、(原則として)国民全員を規律対象とするものですから、一般的・抽象的な定め方をしています。どんなにわかりやすく書いたつもりでも、文字、文章の表現力とか、規定の書き方にはおのずと限界があるし、また、社会はめまぐるしく変化していくものですから、立法当時予想しないような事案に直面し、どういうふうに解釈したらよいかと悩みあぐねることは、どうしても避けられないのです

文理解釈及び目的論的解釈がなぜ求められるのか

「目的論的解釈は、法令の文言から離れたけしからんやつだ」と決めつけたり、「文理解釈は、融通の利かないけしからんやつだ」と決めつけることはできません。法令というものは、めまぐるしく変化する社会において日々を歩む人間の守るべきものなのだから、社会のありのままの現実に適合しなけば意味がありません。種々の事情を考慮して、最も妥当な結果を得るように、いろいろ法令解釈上の方法や技術を使って結論を導き出すというのが、法令解釈の根幹なのです。

しかし、これは決して、法令解釈が融通無碍のどうとでもなるものとするわけではありません。法令解釈とは、根本的には論理(演繹的論理)の問題であって、結果がいかに良くても、途中の論理構成がうまくできていなければ、あくどい詐欺師と異なりません。特に、成文法主義の国において、成文法令の文言を全く離れて飛躍することはできません。

まとめ

書類

「法令解釈とは何かを懇切丁寧に説明し」と銘打ったところではありますが、法令解釈の総論部分を書いただけでこんなにも文章量が増えてしまいました。抽象的な言葉を書き連ねてしまったので、わかったようでわからないでしょうし、むしろこれだけで理解してもらっては困ります(法令解釈は大の大人が一生を捧ぐに値するものであり、一生を捧いでもわからないことだらけであるからこそ、法令解釈は古来から脈々と受け継がれてきており、これからも途絶えることはありえないのです)。とりあえず、「法令解釈はこじつけではなく、論理的思考や目的論的思考を組み合わせて、社会をよりよくするために行われる必要不可欠なことなんだ」と感じとっていただければ十二分です。

つまるところ、法令解釈は実践に始まり実践に終わるものであり、どのように法令解釈をするのか具体的に見なければ理解のしようがありません。法令解釈のスタート地点には、表題に掲げたとおり誰でも立つことができます。しかしながら、レースで一番になるためには、実践と経験をひたすら積み重ねていかなければならず、学者や最高裁はそのトップ選手なのです。本稿はひとまずここで筆をおき、記事を改めて、『法令解釈の作法【実践編】』を閲覧していただければと思います。

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rohan

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法律を基軸として、あらゆる分野の素養を育む。いかなる物象についても、論理的・体系的・網羅的に語りたがる。もちろん、最終的には直感に依存する。

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