ファンタジードタバタコメディ「新任大公の平穏な日常」を読んで~評価、感想など
2015/11/24
ー「この小説を読まないお兄さまなんて、シスコンの風上にもおけません!」
※シスコンじゃない人でも普通に楽しめます。
最近はブログの更新で忙しく、全然小説を読む暇がありません。小説の紹介を心待ちにしている方には申し訳ありません。
さて、今日紹介する小説も小説家になろうから見つけた作品です。
そして、全国シスコンの皆様に朗報です。本日の小説はとってもかわいい妹キャラが登場します。
え?シスコンとか興味ないって?大丈夫です。普通のヒロインも魅力的です。
誰が読んでもニヤニヤしてしまうコメディ小説、「新任大公の平穏な日常」を紹介しましょう。
この小説の作品情報
あらすじ
ただのしがない魔族の男爵でしかなかったジャーイルは、ちょっとしたアクシデントから魔王に次ぐ大公の一人を倒してしまい、その後継の座に就くことになってしまった。これはそんなジャーイルが、脳筋ばかりの魔族の中で、いかに平穏に暮らすかを目指し過ごした、新任1・2年時の物語。ブラコンで我侭な妹、最強の女王様、女好きの親友、やや変態の魔王様、厳格な家令、無表情な部下等々に囲まれつつ、ジャーイルの平穏な日常は今日も続いていくのであった。
あらすじだけを見るとよくあるような小説に見えますが、騙されてはいけません。「平穏な」日常が続いていくことなんてありません。
主人公の性格が破天荒なのです。ちょっとした理由で大公を倒しちゃうし、恐れられている魔王に対しても馴れ馴れしい。
けれども魔族の癖に考え方がどこか人間くさくて親近感をいだいてしまう。
そんな主人公はいつもちょっと変わったキャラクターたちに絡まれます。変な妹、変な女王様、変な親友、変な魔王様、くちばしが変な家令。
この小説はそんなキャラクターたちと主人公のやり取りを面白おかしく描いた作品なのです。
主人公最強ものですが、そんなことはどうだっていい。
主人公最強であろうが苦手な相手には辟易としてしまうし、小言がうるさい家令には頭が上がりません。
物語のスポットはキャラクター同士の人間(?)関係にあてられているのですから。
文字数
「新任大公の平穏な日常」はある魔族の平穏な日常シリーズの前編に当たり、後編に「魔族大公の平穏な日常」が続きます。
前編と後編合わせて70万文字という大ボリュームです。
文庫本で換算すると6冊いかないぐらいでしょうか。長く読める小説をお探しの方にピッタリです。
短編がいいという方も前編27万文字で完結します。
この小説の魅力
「新任大公の平穏な日常」の魅力は何と言ってもキャラクターたちの個性が突出している点でしょう。
どういうことかといいますと、作者の卓越した文章力によって登場するキャラクター全員がとても魅力的に感じられるのです。
まさしく「キャラが立っている」という言葉がぴったりです。
個性のないキャラクターがいないのは当然のこと、どのキャラクターも面白い特徴が一つはあるのです。
そして語り手は主人公だけではなく、それぞれのキャラクターが語り手となるときもあり、そういった時は地の文でも彼らの性格がにじみ出ています。
ここで一つ具体例を紹介しましょう。シスコンの皆さんがお待ちかねである妹キャラの登場です。
「ええ!?」
私はショックのあまり、プレゼントの包みを落としてしまいそうになりました。
「うそでしょう、どうして!?」
端からみれば、そのときの私はさぞ青ざめていたと思います。弱々しい可憐な美少女、そのものであったと思われます。
ああ、また殿方の庇護欲を誘ってしまうわ!
妹キャラが語り手となった時の文章を抜粋してみました。どうですか?このたった5行でもどういう性格をしているか伝わってきませんか?
当然妹だけではなく、登場人物全ての性格がどこか面白いのです。
ここまでは登場人物がいかに魅力的かについて長々と話してきましたが、それだけがこの小説の素晴らしいところではありません。
ストーリー構成もよくできているのです。
主人公最強ものだと困難がないために単調でつまらない小説になりがちなのですが、「新任大公の平穏な日常」ではそんなことはありません。
最初からその世界観に引き込まれてしまいます。
知っていたら、扉を開けたりなんてしなかった。
そもそも、そのことを知っていたら、その部屋に近づきさえしなかった。
けれど、俺は知らなかったのだから仕方がない。
これだけで、「おお!いったい何が起きたんだ」と読者は気になってしまう。
そしてそのあとにあんなことがあるなんて誰が想像できようか。そのギャップによって読者はこの小説に引き込まれていく。
何があったかはネタバレになるので自分の目で確認してくださいね。
プロローグに限らず、作者は話の構成がうまいです。
起こったことをありのままに書いているわけではなく、どういう見せ方をすれば読者に大きなインパクトを与えることができるかを考えているのでしょう。
何よりも文章力のうまさがそれに拍車をかけています。
まとめ
コメディ小説は書くのが難しいこともあって、小説家になろうではあまり見かけません。
だからこそ、コメディ小説は文章力があるという表れでもあるのです。
ほんとはもっとたくさん紹介したい面白い文章があったのですが、それは皆さんが実際に読んで確かめてください。
1話で1回は思わずニヤリとしてしまいます。

XZ

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